気の迷いというか魔が差したというか、急にJESUS(1992-1995年、作:七月鏡一、画:藤原芳秀)を読み返したくなりました。
で、それならばついでに砂塵航路まで行っとくか、いやそれならクロスオーバー全部読み返そうと思い立って現在読んでいる最中です。
JESUS
主人公である伝説の殺し屋「ジーザス」が、ある組織から1トンのヘロインを強奪したことから偶然を織り交ぜて紡がれていくハードボイルドマンガ。一部学園モノ要素あり。
1992年という、もう30年も前になる古いマンガです。
当時の中でも絵柄は古くさく見えましたので、ナウなヤングに「おもしろいよ!」と勧めても絵柄が受け付けないキッズもいるかもしれません。
ただし紛れもなく名作。スナイパーを「狙撃手」ではなく「殺し屋」という意味で使っていたり、細かいツッコミどころはあるものの確実に名作だと思います。
それはなぜかと考えると、やはり無駄なパーツが少ないことが理由だと思います。
無駄なシステムや余計なキャラクターが多いと、それだけわかりにくくなり、テンポが悪くなります。
有名な作品を例に挙げて説明すると、初期のワンピースと最近のワンピースの差がまさにそこですね。
JESUS 砂塵航路
2009-2012年、作:七月鏡一、画:藤原芳秀。
無駄がないと評した前作から、いくらか無駄が増えた印象の続編。
今作は偶然ではなく、ジーザスの目的が最初から固まっているのですが、終わってみれば褒められるのはそこだけだったような気も。
今作は他作品(「死がふたりを分かつまで」「闇のイージス」「暁のイージス」)とのクロスオーバーで展開されるため、これだけを読んでも全容が理解できない上に、どうしても内容が薄い部分があるのが難点。
総評としては結局味が薄くなっただけの印象ですが、クロスオーバーという仕掛けは評価したいですね。
死がふたりを分かつまで
2005-2015年、作:たかしげ宙、画:DOUBLE-S。
予知能力を持つ少女・遠山遥と、遥に強引に護衛にされた、剣術の達人である盲目の青年・土方護の物語。おそらくクロスオーバーの中枢をになう作品?
リアルタイムで読んでで、そのときはかなりおもしろかった記憶があるんですが、今読み返すとかなり微妙でした。
その原因として考えられるのは、やはりキャラの多さ。特に「一度に出てくるキャラの数」がものすごく多い。それぞれに出番を与える必要が出てくるせいか、かなりテンポが悪くなっている印象を受けました。
主人公の土方護は今見てもかなりかっこいいだけに残念。
ラスボスも設定の割に存在感を感じませんでした。
個人的には土方護とジーザスとイージスが三人がかりでやっと倒せた、くらいの展開にしてほしかったなと思います。
そう考えるとこのクロスオーバーも、物語的にはあんまり意味なかったのか。
試みとしては買うけれども。
闇のイージス/暁のイージス
2000-2006年。JESUSと世界観を共有する、作:七月鏡一、画:藤原芳秀コンビのマンガ。
「護り屋」楯雁人が、数々の依頼に応じて依頼人を護衛する話と、護り屋となるきっかけとなった事件を引き起こしたテロリスト「蝶」と対決する話を軸に展開される。-Wikipediaより。
という話なんですが、なんで家族を殺されて「護り屋」になったのかという点だけはしっくりこないですね。
作品自体は短編集形式なので読みやすいです。これから入るのもおすすめ。ライバルキャラの「ゼロ」が魅力的。クロスオーバー作品の中で一番キャラが立ってる敵役だと思います。
そう考えると他作品の敵役はほぼ空気だったな……
これで楯がバリバリに敵を殺してくれる作品だったらもっとわかりやすく楽しめるマンガだったでしょう。
あと「イージス」の欠点といっていいかわからないんですが、依頼自体はこなすけどそれ以外での失敗がすごく多いところ。「誰も死なせない」ことを信条としているのに、楯の目の前で何人も死にます。このせいで微妙な「中途半端感」がある。
そこから盛り上がって無事にクライマックス!
……からの余計な小話をいくつか挿んで「闇のイージス」完。
いや、なんで一回流れを断ち切ったのか謎すぎる。
そして「暁のイージス」へ。
こちらは最後までノンストップ。
綺麗に駆け抜けてくれます。
文句もつけたけど、一番綺麗に終わるのはこの「イージス」ですかね。
登場人物が増えても、作者がしっかりコントロールできているのか、物語が散らからないまま畳んでくれました。